一人の技術を、地域の力へ|神石高原日本ミツバチ研究所 訪問記
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神石高原町を一望できる丘
2026年7月24日。
福山駅から車を走らせること、約1時間。私たちそのままハニーチームは、広島県神石高原町にある「神石高原日本ミツバチ研究所」を訪ねました。
標高500〜700メートルの高原地帯にあり、町の大部分を森林が占める神石高原。田畑と山々が連なるこの里山には、日本の原風景が残っています。真夏の日差しが降り注ぐ日でしたが、吹き抜ける風には、都市部とは異なる涼やかさがありました。
迎えてくださったのは、神石高原日本ミツバチ研究所の所長・東一史さんと、一般社団法人神石高原町観光協会の山田政志さんです。

神石高原日本ミツバチ研究所 所長 東さん・そのままハニーチーム
教えることから、地域で育てることへ
東さんのニホンミツバチ養蜂歴は、約20年。
以前は教職に就いていたという東さんのお話には、長年の経験だけでなく、一つひとつの現象を観察し、理由を考え、次の実践へつなげていく姿勢があり、まさに研究者そのものでした。
神石高原日本ミツバチ研究所は、東さんが培ってきた養蜂技術を伝える場所であると同時に、地域の養蜂家が集い、学び合う交流拠点でもあります。養蜂用品や巣箱の製作、講習会などを通じて、ニホンミツバチの養蜂を地域に広げてきました。
東さんを中心につくられたLINEグループには、現在80人を超える養蜂家が参加しているそうです。分からないことがあれば、いつでも質問できる。誰かの巣箱に異変があれば、知識や経験を持ち寄って考える。
今回ご同行いただいた山田さんも、そのコミュニティで養蜂を学ぶ一人です。
養蜂を始めたばかりの頃、初めてニホンミツバチが巣箱に入った日のこと。東さんに相談しながら一喜一憂した当時のやり取りを、山田さんは大切そうに見せてくださいました。

山田さんと東さんのやり取り
一人の技術を、一人だけのものにしない。
東さんが長年積み重ねてきた知識は、地域の中で共有され、次の養蜂家へと受け継がれています。

ニホンミツバチの巣箱の中
糖度79.5度に込められた、「美味しい」への探究
この日は、実際に採蜜の様子も見学させていただきました。
巣箱から取り出された巣板には、ニホンミツバチが集めた百花蜜が、隙間なく蓄えられています。その場で切り分けていただいた巣蜜、いわゆるコムハニーを口に含むと、やわらかな甘さと芳醇な香りが、一気に広がりました。
驚いたのは、その後味です。
濃厚な巣蜜を食べたはずなのに、甘さが喉に残らず、すっと通り抜けていきます。
「糖度は、79.5度くらいが一番、喉を通りやすいんです」という実感はもちろん、これまでの経験すべてを通じてご自身が「本当においしい」と納得できる基準が、まさにこの79.5度でした。
東さんが目指しているのは、ただ糖度の高い蜂蜜ではありません。甘さ、香り、口当たり、そのすべてが調和した本物の「美味しさ」です。
この日の計測値は、糖度79.9度。

79.9と表示された糖度計
東さんは、80度を超えると甘さが強くなり、喉に残りやすくなると考えています。そのわずかな違いを見極めるため、採蜜の時期や蜂蜜の状態を細かく観察し、濾過の方法にも工夫を重ねてきました。
研究所では、巣板から蜂蜜が自然に落ちるのを待つ「垂れ蜜」の方法も取り入れています。時間をかけ、熱を加えず、蜂蜜が本来持っている香りと味わいを丁寧に引き出します。
79.5という数字へのこだわりは、東さんの養蜂を象徴しているようでした。
小さな違いを見過ごさず、試し、確かめ、より美味しいものを目指す。その探究心は、採蜜だけでなく、巣箱のつくり方や群れの管理、越冬への備えに至るまで、養蜂のすべての工程に貫かれています。

東さんのミツバチの飼育日記
地域に広げる、支え合う養蜂
神石高原は、森林や田畑、里山の植物に囲まれた、豊かな蜜源を持つ地域です。
東さんによると、環境や蜂群の状態が整えば、ニホンミツバチでは珍しく、年に2回採蜜できることもあるそうです。
しかし、たくさん採れるからといって、すべてを人が受け取るわけではありません。
冬を越すミツバチのために、必要な蜂蜜を巣箱に残す。群れの状態を見ながら、人がいただく量を決める。そこにあるのは、収穫量だけを追い求めるのではなく、ミツバチと共に生きていくための節度でした。
さらに、東さんを中心とする地域の養蜂家の間では、蜂群を売買したり、地域外から安易に持ち込んだりしないという考え方が共有されています。
その理由の一つが、ダニや病気が地域に持ち込まれる可能性を、できる限り抑えることです。※
ニホンミツバチの養蜂では、ダニへの対応が大きな課題の一つです。
だからこそ、一人ひとりが個別に対処するだけではなく、地域の養蜂家同士が情報を共有し、共通の方針で予防に取り組む。
一つの巣箱だけではなく、地域全体のミツバチを守る。
養蜂家のコミュニティがあるからこそできる、神石高原ならではの取り組みです。
※蜂群の移動とダニの拡大との関係や、適切な予防方法についてはさまざまな見解があります。ここでは、神石高原の養蜂家の皆さんが地域で共有している考え方として紹介しています。
東さんと近くで巣箱を見学しているそのままハニースタッフ
神石高原を、ニホンミツバチの蜂蜜の名産地へ
「神石高原を、ニホンミツバチの蜂蜜の名産地にしたい」
東さんは、観光協会の山田さんと共に、そう語ってくださいました。
神石高原にとって、豊かな自然は、この土地と人が受け継いできた大切な資産です。そして、その環境の豊かさを物語る存在の一つが、この地に生息するニホンミツバチなのだといいます。
ただ蜂蜜をつくるだけではなく、養蜂を始める人に技術を伝え、困ったときには相談に乗り、地域全体でミツバチを守る仕組みをつくる。
その先にあるのは、生まれ育った神石高原への思いです。
養蜂家が増えれば、地域に暮らすニホンミツバチの群れも増えていく。
ミツバチが花から花へ飛び交えば、植物の受粉を助け、地域の自然や農作物にもつながっていく。
一人の養蜂家から始まった取り組みが、人を結び、地域の未来を育てています。
神石高原の百花蜜の美味しさは、豊かな自然だけが生み出したものではなく、人・ミツバチ・地域のすべてが重なって、あの優しく、澄んだ甘さが生まれているのだと感じました。
神石高原で育まれたニホンミツバチの百花蜜は、そのままハニーのスティック商品を含むラインナップでお楽しみいただけます。
自然と人が共に育てた、とびきりの生ハチミツを、ぜひ味わってみてください。

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Text & Edit
そのままハニーチーム(運営:株式会社アンウォール)
Special Thanks
神石高原日本ミツバチ研究所 所長 東 一史さん
https://www.facebook.com/8kenhgs/?locale=ja_JP
一般社団法人神石高原町観光協会 山田 政志さん
https://www.facebook.com/jinsekikougenlove/?locale=ja_JP