千葉県外房にて、新たな出会い|HANAP訪問記
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海のある長生村の風景(九十九里浜)
千葉県東部、九十九里浜の南部に位置する長生村。
太平洋に面し、黒潮の影響を受けることで年間を通して温暖な気候に恵まれ、起伏の少ない平坦な地形が広がっています。海と田園が隣り合うこの地域では、稲作や野菜栽培を中心とした農業が営まれ、のどかな風景が今もなお色濃く残されています。
この土地には、季節ごとに多様な植物が咲き、ミツバチにとって安定した蜜源環境が育まれています。
春の梅や桜に始まり、足元に広がる小さな草花、民家の果樹や生垣、雑木林の広葉樹、畑に咲く野菜の花まで、季節の移ろいとともにさまざまな花が咲き継ぎ、豊かな植生を形づくっています。
今回そのままハニーチームが訪れたのは、この自然環境の中で養蜂を営むHANAPさん。
2020年にご夫婦で養蜂を始め、現在は約40群から年間およそ1トンのハチミツを生産されています。また、千葉県で初めて養蜂GAPの第三者認証を取得されており、生産工程全体に対する責任と透明性を重視した取り組みをされています。
分散する巣箱がつくる、地域との関係
現地でまず印象に残ったのは、巣箱のあり方でした。
巣箱は一箇所に集められるのではなく、長生村をはじめとした周辺地域に点在するかたちで設置されています。
ミツバチは広く多様な蜜源から花の恵みを受け取り、周辺の農作物や植物には受粉というかたちで恩恵がもたらされる。
この関係はどちらか一方に偏るものではなく、互いにとって自然なかたちで成立しています。
養蜂という営みが地域に溶け込み、土地と人と生き物のあいだに静かな循環が生まれている様子に、深い感銘を受けました。
HANAPの養蜂場
なぜ養蜂だったのか——自然を次の世代へ
橋澤さんは東京都出身で、幼いころから生き物に強い関心を持ち、大学・大学院では動物科学や動物栄養を専門に研究を重ね、農学博士を取得されています。
その後は畜産・飼料業界に身を置き、動物栄養学の知見をもとに、生産現場に向き合う仕事に携わってきました。
研究と実務の両面から「生き物」と関わり続けてきたことが、現在の養蜂にもつながっています。
一方で、仕事を通じて生産者と関わる中で、「つくる側に立ちたい」という想いが次第に強まっていったといいます。
加えて、コロナ禍によって働き方が大きく変化したことも、ひとつの転機となりました。それまで年間の多くを海外出張で過ごしていた生活が一変し、リモート中心の働き方へと移行する中で、自身の仕事や暮らしのあり方を見つめ直す時間が生まれたといいます。
そうした流れの中で出会ったのが養蜂でした。ミツバチは環境と密接に関わる生き物であり、その営みはそのまま自然環境の状態を映し出します。
植物との関係性、地域との関係性、そして人の関わり方まで含めて成立する養蜂という仕事に、これまで積み重ねてきた知識や関心が重なったことが、大きな転機となりました。
前職を離れる決断は簡単なものではなかったはずですが、その背景にはご家族の支えもあったといいます。そうして2020年にご夫婦で養蜂をスタートし、現在のHANAPのかたちへとつながっています。
これまでの経験と、自然と向き合う意思が重なって選ばれた養蜂という道。
その背景を知ることで、この土地での営みにより深い意味を感じることができました。
そのままハニーの商品を手に取るHANAPさん
問いから広がる、ミツバチの世界
視察後にご一緒した食事の時間では、ミツバチの生態について多くの話を伺いました。
働き蜂はすべてメスで、生まれてから寿命を迎えるまで役割を変えながら働くこと。巣の中では成長に応じて担う仕事が変わっていくこと。
そんなミツバチの基本的な話題から、会話は静かに始まりました。
「春や夏のミツバチは2〜3ヶ月しか生きないのに、どうして長い冬を越せるのでしょうか。」
その問いに対して、
「サマービーとウィンタービーは別なんです」
と橋澤さんはすぐに答えます。
「秋になると女王蜂が越冬用の蜂を産むのですが、それがうまくいくかどうかは夏までの群れの状態で決まります。つまり、越冬の勝負は秋に入る前に決まっているんです」
と、よどみなく説明が続きました。問いに対して迷いなく返ってくる言葉は、整理されていながらも実感に裏打ちされており、そのテンポの良さに思わず次の質問が生まれます。
「ミツバチは、なぜハチ目の中でハチミツをつくるようになったのでしょうか。」
そんな問いにも、
「もともとの蜂は寄生蜂なんです」
と即座に話が展開します。そこから、獲物を麻痺させる蜂、持ち帰りストックする蜂、そして巣を持つ蜂へと進化していった流れが語られ、さらに花と関係を持つ“花蜂”がどのように現在のミツバチへとつながっていったのかが、自然な流れで続いていきました。
ひとつの問いが次の問いを呼び、そのたびに明快な答えが返ってくる。
専門的でありながらもどこか軽やかで、聞く側の理解に寄り添うように言葉が選ばれている印象でした。気づけば、こちらも夢中になってミツバチの話を追いかけていました。
知識を伝えるというより、「好きだから話している」という自然な熱量が感じられ、
橋澤さんが生産者である前に、ミツバチのファンであることが、会話の端々から伝わってくる時間でした。
春の花粉を集めるミツバチ
外房の風土をそのまま映した百花蜜
今回仕入れさせていただく百花蜜は、この土地の環境をそのまま映したような、すっきりとした味わいが特徴です。
多様な花から集められた蜜は、調和的で透明感があります。
このハチミツは2026年5月より、そのままハニーのラインナップに加わる予定です。
また、HANAPでは採蜜から製品づくりまでの工程を身近に感じられるワークショップと、「HANAP FactoryShop & Cafe」を運営されています。都市部から訪れる方も多く、養蜂やハチミツの背景を体験として学びながら、実際に味わうことができる場となっています。カフェではハチミツを使ったメニューが楽しめるほか、ハチミツの量り売りや商品販売も行われており、その魅力をより身近に感じられる空間です。養蜂という営みを「味わう体験」として届けていることが印象的でした。ぜひ現地でその空気ごと味わってみていただきたい場所です。
HANAP代表 橋澤さん・そのままハニーチーム
HANAP Factory Shop & Cafe
〒299-4321千葉県長生郡長生村入山津810-5
営業日時:土日 10:00~17:00
※イベント出店等でお休みする場合がございます(最新情報はSNSをご確認ください)
https://www.hanap83.com/
HANAP Factory Shop & Cafe
自然の中で育まれたものを、その背景ごと丁寧に届けていくこと。それがそのままハニーの役割であり、今回の出会いを通じて、改めてその意味を実感しました。
Text & Edit:そのままハニーチーム(運営:株式会社アンウォール)
Special Thanks:橋澤 義憲・橋澤 小百合(合同会社HANAP)