養蜂家紹介 #Series02 朝翠 Vol.1
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朝翠養蜂販売株式会社は、創業100年の国産はちみつ専門店です。
大正8年(1919年)に札幌で創業し、漢方薬に入れるはちみつをリヤカーで運び届けていたところから始まりました。その後、ミツバチが好む温暖な気候と四季の花を求めて小田原へ移り、定置養蜂も開始。以来、「健康を維持し、自然の味そのままのおいしさをお客様にお届けする」をモットーに、養蜂と無添加・非加熱のはちみつ販売を行っています。
社名の「朝翠」は、あたたかな朝日と艷やかに輝く翠(みどり)をイメージして2代目社長が考案したもの。ミツバチがよろこぶ緑豊かな自然を大切に思う気持ちがあらわれています。
ミツバチとともに花を追って旅をする
あさみどりの養蜂業を取り仕切るのは、四代目代表取締役の杉本真理子さん。小田原市内で4つの地域に巣箱を設置し、50~60の蜂群を定置養蜂で育てています。
「年に一度、花が咲く5月に、とびきりのみかんの香りとコクのある甘味が楽しめる、みかんの花のはちみつが採れます。その土地ならではの季節のはちみつを味わえることが、定置養蜂の魅力。元気に飛んでくれるミツバチと、小田原の穏やかな気候、そして地元のみかん農園さんのお陰でいただける恵みです」
小田原での定置養蜂に対して、転地養蜂は蜜源植物の開花に合わせて日本各地へ巣箱を移動し採蜜する方法。はちみつがもっとも美味しく採れる時期と地域を選び、南は宮崎~北は北海道まで、杉本さんはミツバチとともに旅をします。
「良質なはちみつを採るには、定置と転地どちらも『健康なミツバチ』と『豊かな蜜源』がなにより大切です。蜜源の確保はとても難しいのですが、祖父の代からつながっている全国の養蜂家の方々に力添えをいただいています」
ミツバチのふしぎな生態と社会
北海道道北、稚内と旭川の中間エリアに、地元の養蜂家がカムイの山と呼ぶ自然豊かな山林があります。あさみどりが提携する転地養蜂地のひとつです。普段人が立ち入ることのないその山奥へ、毎年杉本さんはトラックに200群もの巣箱をのせて訪れます。
「クマやエゾシカもいる、ペンケやパンケといったアイヌ語の道の名前が今も残るような、神々しい山。祖父の代からご縁のある養蜂家さんが何十年も守り続けている土地です。そこにミツバチと一緒にお邪魔して、キハダ(シコロ)の木の花の蜜をおすそわけしてもらいます。
作業は日の出から夕方まで、丸三日かけて行います。重労働でクタクタになるけれど、でも心も体も元気になる、なんともいえないエネルギーがもらえる。ミツバチも喜んで飛んでいるように見えるの」
置かれた巣箱から、働きバチ達が飛び出しました。ひとつの巣箱には1匹の女王バチと数千の雄バチ、4万匹もの働きバチ(雌バチ)が暮らしています。
働きバチの寿命は約1ヶ月。生まれてから2〜3週間は巣箱の中で掃除や育児、巣作りに努めます。その後1〜2週間は巣の外に出て、蜜の採集や花粉媒介をします。ミツバチは優れた記憶力を持ち、色・形・匂いや花の場所を覚えて、巣箱に迷わず帰ってくることができるのだそうです。
「箱の中にひとつの社会があり、全員がはっきりと役割を持っている。その中で、仲間に花の場所や距離を伝えるためにダンスを踊っている子とか、ちょっと怒ってる子とかいたりしてね。よく見て、飛ぶ姿や羽音を聞く。五感を研ぎ澄ませてお世話をしていると、ミツバチの気持ちがだんだんわかってきて、おもしろいですよ」
Bee First の養蜂を守る日本の養蜂家たち
長らくあさみどりの手伝いをしていた杉本さんが、本格的に事業を担うようになったのは1994年(平成6年)以降。2代目である父・暁さんの急逝がきっかけでした。
「小さいころから養蜂場に行って、父の姿を見てきました。養蜂は好きでずっと手伝ってはいたけれど、まさか私が継ぐとは思ってもいなくて。父からもっといろいろ教わっておけばよかったなあって思います。
刺されたら痛いか? ミツバチはそれほど痛くないけれど、ミツバチの天敵のスズメバチは刺されるともう本当に痛い。パンパンに腫れあがりますね。でもミツバチを守るために、必死で戦いますよ」
おっとりとした雰囲気で穏やかに笑う杉本さんからは想像もできない姿です。
「この世界で生きていく覚悟ができたのは、養蜂家仲間のお陰。父や養蜂家のみなさんが代々継いできた、ミツバチや自然を第一に考える伝統的な日本の養蜂を、私も守っていきたいと思ったからです。北海道の養蜂家さんには何度も助けてもらっているから、繁忙期にはお手伝いに行っています。養蜂は助け合いですね」
北海道のキハダの開花日数、2週間ほど、採蜜時期も6月中旬~7月上旬というとても短い期間。蜂群の健康状態や天候などの条件を見計らい、巣箱をトラックの荷台に積み慎重に移動する。そして現地で下ろして数日間滞在し、蜜を採取したらまたトラックで帰る。大変な労力のいる仕事です。
しかし、常にミツバチを一番に考えなくてはいけないと、杉本さんは言います。
「養蜂は命をいただくのではなく、共生する仕事です。ミツバチたちは自然界の生態系を支える存在。と同時に、ちょっと気を抜いただけで、天候や病気、農薬などの影響で、あっという間に数万の蜂群がいなくなる。とても繊細な生き物です。だからこそ、手間暇を惜しまず愛情をかけて、健康なミツバチを育てる。ミツバチの良きサポーターであり続ける。それが私たち養蜂家の使命です」
ミツバチを愛し、人のご縁に感謝し、自然と土地を守り、最高のはちみつを届ける。
まさに、そのままハニーのポリシーである「Bee First」の精神を体現しているように感じます。
「北海道の大自然で育ったキハダの花の蜜は、甘みがすっきりして、ほのかに柑橘系の香りがします。日本の全国にミツバチ第一でがんばっている多くの養蜂家さんがいます。その方たちのすばらしいはちみつを多くの方に味わっていただきたいですね」
#Series02 朝翠 Vol.02 へ続く...